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日本テレロジック(株)は2007年9月5日,「モデル駆動型組込みシステム・ソフトウエア開発の効率化を実現するためには」と題してUMLモデリングカンファレンスを開催した。最初のセッションは,「もうプロセスは十分… 実践しましょう!」と題して,UMLの生みの親であるIvar Jacobson(イバー ヤコブソン)氏による講演が行われた。氏によると「日本のみならず世界中のエンジニアは,具体性のない“プロセス”にはうんざりしている。そこで発想を変え,“プラクティス”という一段階具体化したレベルで仕事を体系化し,その一連のプラクティスの集合が結果的にプロセスとなる,と考えると,普段の作業との乖離も少なく,取り組みやすい」という。これを実践するためのツールとして,氏が開発し,登録者に対して無料で配布(http://www.esswork.com/)しているカード型のプラクティス実践ツール「EssWork」を紹介し,作業を単純化したカードを組み合わせてプラクティスを形成していく過程を紹介した。
続く,実践編・導入編セッションでは,日本テレロジックの倉岡幹雄氏および石田雅人氏により,同社のモデル駆動型組込み開発環境である「Telelogic Rhapsody」の代表的な使われ方として,ユースケース図を書く→クラス図を書く→シーケンス図を書く→ステートマシン図を書く→Rhapsody上で実行して(実機がない段階でも)動作を確認する,という流れを紹介。また,Rhapsodyを実際に開発に用いた事例として,自動車メーカーや通信機器メーカーの事例が紹介された。
Ivar Jacobson氏
最後は,参加者から集めた質問状をもとに,Jacobson氏を交えてパネルディスカッションが行われ,『小規模開発にも文書化などのプロセスは必要なのか』といった問いに対して,「小規模ではコミュニケーションが取れているので文書化は不要,だが将来開発者が入れ替わることなど考えるとやはり必要」(Jacobson氏),「小規模では個人の能力を高める支援のほうが大事」(三栄ハイテック,森 孝夫氏)。また,『プロセスの良し悪しはどう判断するか』という問いには,「結局は使ってみた人の判断に依存する。それを振り返って評価することが重要だが,そこまでできている会社は少ないのではないか」(リコー,鍵野正則氏)など,パネラーの方の実体験に基づく貴重な意見が交換された。
終わってみれば「UMLモデリングカンファレンスだったよな?」と自問するほどUMLに関しての言及が少なかったが,開発効率の向上のためにどう取り組むかという点で非常に充実した内容であった。
- 日本テレロジック
- http://www.telelogic.co.jp/