『スクラム実践入門 ── 成果を生み出すアジャイルな開発プロセス』より転載
2015年1月 著者を代表して 貝瀬 岳志
本書は、これから組織にスクラムを導入しようとしているマネージャー、すでにスクラムを推進しているスクラムマスター、そしてチームで働くすべての方に向けた入門書です。スクラムの導入にあたって必要な基本的な知識だけでなく、スクラムの導入後に発生するさまざまな問題とその対処のしかたまで、幅広く紹介しています。
スクラムとは何かを一言で表すと、「複雑で変化の激しい問題に対応するためのフレームワーク」(※)です。その特徴ゆえに、スクラムはソフトウェア開発に従事する開発者やマネージャーを中心に、ハードウェア開発など非ソフトウェアの分野にまで幅広く導入されており、最も普及しているアジャイル開発手法です。
一方でスクラムは、「軽量で理解が容易だが習得は困難」とも言われています。その理由の大きなところは、スクラムは「問題をあぶり出すフレームワークではあるが、発見した問題に対して具体的な解決策を提示していないため」と筆者は考えています。具体的な解決策を提示していないのは、背景、状況などの違いにより、共通となる解決策が導き出せないためです。スクラムでは代わりに、スクラムイベントをはじめとするスクラムフレームワークの実践を通じて、具体的な解決策を導き出す手助けを行います。
本書の構成を紹介します。
第1章から第4章では、スクラムが必要とされる背景から、スクラムの実践に必要な基本的なルールまでを解説しています。スクラムをこれから実践する方は、まずここから読み進めていただくことをお勧めします。すでにスクラムを実践している方にとっても、新たな発見があると思います。
第5章では、スクラムを実践するうえで相性の良いプラクティスを紹介しています。筆者たちが現場で活用しているプラクティスのうち、よく使われる実用的なものを厳選しています。状況や問題が異なっていても活用できる汎用的なプラクティスばかりですので、一通り目を通していただくことをお勧めします。
第6章から第8章では、筆者たちが所属しているGMOペパボ、mixi、DeNAのスクラム導入事例を紹介しています。各社ごとに導入の経緯、導入前後の変化、特徴的な事例などは異なりますが、この中から少しでも、スクラム導入のヒントを得ていただければ幸いです。
第9章から第12章では、スクラムを実践するうえで発生するさまざまな問題と、その解決策を紹介しています。筆者たちが共通でぶつかった問題を多く取り上げていますので、日々のスクラムを実践する中で、リファレンス集としてご活用いただけると思います。
本書が出版されるギリギリまで、扱うべきトピックについて著者全員で議論を重ねてきました。現在本書に残っているものは選りすぐりです。最初から最後まで楽しんでいただけることを願っています。