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イーソル,東大大学院の坂村教授を迎えてT-Kernelソリューションセミナーを開催

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イーソル⁠株⁠は9月20日,ガイオ・テクノロジー⁠株⁠および横河ディジタルコンピュータ⁠株⁠協賛のもと,⁠T-Kernelソリューションセミナー」を開催した。

「いままでのITRON,これからのT-Kernel」と題して組まれた各プログラムでは,同社の澤田 勉社長によるあいさつにはじまり,同社および協賛各社による組込みソフトウェア戦略やソリューションの紹介を中心に進められた。中でも際立ったのがTRONプロジェクトの創始者である東京大学大学院情報学環教授,坂村 健氏による基調講演だ。

まず,ユビキタスコンピューティングというインフラの整備とその上で起こるであろうイノベーション(技術革新)について触れ,インフラを早期に実現するためにも効率的な開発環境の整備が非常に重要であるとし,T-Kernelの位置付けを示した。また開発環境と関連して,T-Kernel向けの開発ボード「T-Engine」に話が及び,ノートパソコンひとつあればどこでも開発できるIT系のプログラマと同等の開発環境を組込みエンジニアにも提供したいという目的で小型化を図ったことなどを示唆。また,一部開発者の間で誤解されている点として,リファレンスボードはあくまで開発用であって,そのものを製品に使えというわけではないことを念押しした。

次にITRONの問題点として,類似した例にLinuxのディストリビューション違いにおける互換性のなさを示し,ITRONの特徴でもあった「弱い標準化」によって多数のバージョンが登場してしまったことや,OSなしの組込みシステムが中心だった当時とソフトウェアが肥大化しつつある現在の状況を挙げ,ニーズや時代背景が変化してきたことを指摘。ここでもドライバモデルやI/Oマネージャを提供し,チップを差し替えてもソースのリコンパイルでほぼ動くT-Kernelの使い勝手のよさを強調していた。

最後に,⁠TRONエンジニア試験」などの認定試験に関する話題に触れた。このような企業や開発者の力量の目安となる試験制度は,言語の意思疎通が不自由な場合でも有効とあって,国内よりもむしろ中国やインドを中心とした海外から要望が強いということを披露。国外での利用が進まなかったITRONのときの反省を踏まえ,世界的な展開を見据えて今後T-Kernelを推し進めていく戦略であることを強調すると同時に,暗に国内の開発者に向けても一層の奮起を期待する内容であった。

イーソル
URLhttp://www.esol.co.jp/