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アドビ システムズ イルグ社長に聞くAIR,Flexの展開

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アドビ システムズ株式会社の代表取締役社長ギャレット イルグ氏に,今年末のリリースが予定されているクロスOSランタイムAIR(Adobe Integrated Runtime⁠⁠,リッチインターネットアプリケーション開発フレームワークFlexの展開などについて聞いた。

――AIRで目指しているのはどんな世界でしょうか。
AIRによって,デベロッパの環境が劇的に変わると思います。これまでブラウザの中で作業してきた方たちが,ブラウザの外で仕事ができるようになり,Webベースのアプリケーションをデスクトップに拡張できるようになります。そしてクリエイティブな方たちが持っているアイディアを,もっと制約の少ない環境で構築できるようにしていきたいと思っています。AIRはいろいろ意味で革命を起こせる技術だと思います。1つ目はSaaS(Software as a Service)として。2つ目は,FlashやHTMLなど,既存のWeb開発スキルだけでアプリケーションを構築できるという,アプリケーションの構築方法。3つ目には,デベロッパの方たちがソリューション開発をする際のアプローチの変革です。
――最近アドビは,SDK,コンポーネントなどの開発環境のオープンソース化を積極的に行っています。その狙いは?
デベロッパの方たちは「標準」によって多くのものを享受することができるという事実を我々は認識しておくべきだと考えます。これは言ってみれば先ほどの革命の一部だと思います。今私たちはFlexで,可用性を高めてたくさんの方々に利用していただくことで革命を実現していこうとしています。その一環としてSDKをオープンソース化しました。
――JavaはJava Community Processでさまざまな企業が参加する形態でしたが,今後,AIR関連の製品はどういった普及戦略を考えていますか。
私はJavaが動き始めたときにちょうどBEAシステムズ株式会社にいましたが,当時,BEAを含む非常に広範な企業が関わってJavaの認知度を上げました。その結果,当初ははたしてこれが標準になるのかという状況でしたが,標準になった。Flexはその意味ではJavaとは違うと言えます。1つにはアドビが主体で牽引していること。これはチャンスでもチャレンジでもあります。今,マルチメディア,Web,ブラウザといったものが,まさに変化しつつある時代にあります。だからアプリケーションは,⁠Flashの)swfファイルのようなさまざまな種類のメディアとの統合ができなければならず,考えるべきことが増えています。Flexはその中にあって,非常にユニークなポジションを築くことができました。これはMacromediaの買収後のさまざまな努力の結果です。その意味で,Flexが持つパワーが,まさに今の市場のニーズにマッチしていると思っています。Javaはいろいろ企業が関わって,普及を促したわけですが,Flexではデベロッパコミュニティやお客様がその代わりを果たしてくださると期待しています。
――グーグルがさまざまなサービスやソフトを無償で公開していますが,アドビのようなパッケージソフトウェアベンダのビジネスモデルに影響はありますか?
私たちのようなテクノロジ企業がすべき一番大事なことは,常にイノベーティブであり続けることだと思います。グーグルは,アドビ,マイクロソフトといった歴史のある確立されたソフトウェア会社に対して,さらなる変革の必要性を迫った企業として,非常に注目しています。ただ,一歩立ち返って考えると,少なくとも今の時点でのグーグルのミッションは,広告収入から収益を上げるということ。ですからそこには,たとえば一番素晴らしいフォトエディタを作るとか,一番素晴らしいワードプロセッサを作るということではなく,ソフトを使ってたくさんの方にページを閲覧してもらって広告で稼ぐのがそのミッションなわけです。私がレストランに行くときには,あくまでもその料理に力を入れているレストランで食べたい。そこでどんなに素晴らしい家具を使っていても,家具より料理の味に注力しているレストランで食べたい。アドビは,高品質でとても魅力的な,そしてパワフルなソフトウェアを作り出す会社です。これが私たちが成長を続けていくことができる要因です。グーグルモデルによって確かに刺激を受けたところはあると思いますが,私たちがやっていることと彼らのそれとは,基本的には違います。

ギャレット イルグ社長

ギャレット イルグ社長

アドビ システムズ
http://www.adobe.com/jp