この記事を読むのに必要な時間:およそ 1 分
2007年2~3月にかけて,2006年度上期未踏ソフトウェア創造事業の成果報告会が行われました。未踏ソフトウェア創造事業は,個人やグループによる独創的なソフトウェアプロジェクトを支援する制度で,独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によって運営されています。
本誌では3つの成果報告会の取材を行いましたので,その模様をお伝えします。
高田浩和・並木美太郎・ウィリアム齋藤PM合同成果報告会
PCIバスから利用できる組み込みデバッグ支援環境(藤田憲正氏)やコンパイラ開発者・研究者のためのコンパイラキット(阿部正佳氏)といったコア技術から,オーバレイマルチキャスト放送基盤(池長慶彦氏),2次元コードリーダを活用した個人認証システム(田中充氏),マルチロボットを協調管理するフレームワーク(片岡慧氏)など実社会での運用を期待させるものまで,幅広いテーマがカバーされていました。
複数のPMが合同で行う成果発表会は,発表者・参加者とも多様で,豊かな議論が行われる可能性が高いので,今後もこうしたスタイルの成果発表会が増えることを望みます。
千葉滋PM成果報告会
先進的な基盤ソフトウェアの開発を標榜する同PMのもとでは,CMS全体をプラグインアーキテクチャで構築する「Kvasir/Sora」(横田健彦氏),RubyによるオープンソースWebコマースシステム「esr-sys」(二宗崇氏),テストケースから擬似クラスを自動生成し,共同開発の効率を劇的に改善するツール「KikainekoMocker」(伊尾木将之氏)といった期待度抜群のプロジェクトの発表が行われました。競争の激しい分野での開発なので,どれだけこれらのソフトウェアが普及するかは,未踏期間終了後の活動にかかっていると言えそうです。
このほか,観測データ向けに最適化したDMBSシステム(川島英之氏)についての発表も行われました。こうした分野のソフトウェアは商用ではコストが高く,かといってオープンソースでは機能・性能的に不十分なことが多いので,今後ともこうしたプロジェクトが採択され続けることを期待します。
千葉PM成果報告会の様子(KikainekoMockerを開発した伊尾木氏)
黒川利明PM成果報告会
ここでは,アーンドバリューに基づいたプロジェクト管理を行うシステム(碇永志氏)とAjaxを用いた医療情報システムの開発(野村直之氏)の成果が発表されました。医療情報システムの開発では,大規模で複雑な対象分野であってもAjaxによる要求開発が可能なことが実証されました。新しい技術と新しい開発スタイルが,レガシーなシステムの欠点を補っていくことを期待します。
2000年度から始まった未踏ソフトウェア創造事業ですが,オリジナリティ溢れるソフトウェアが短期間で開発されるという本来の意義だけでなく,全国から有望な開発者が集うコミュニティとしての意義も大きくなってきました。来年度は一体どんな成果が飛び出すのか,そしてどんな出会いがあるのか楽しみでなりません。
- 未踏ソフトウェア創造事業Webページ
-
- http://www.ipa.go.jp/jinzai/esp/2006mito1/