春らしい暖かい日が増え、日本にもたくさんの「新人さん」が発生する季節を迎えました。新しい職場や研究室によっては、新人の最初の作業として「自分用の作業PCにLinuxディストリビューションをインストールする」というイベントに遭遇するかもしれません。
そこで今回は、過去のRecipeを振り返りつつ、LinuxディストリビューションのひとつであるUbuntuとの付き合い方について紹介します。本記事は2011年に公開した第166回 のアップデート版です。
ちなみに本連載(Ubuntu Weekly Recipe)は9年以上にわたる連載です。そのため過去記事で紹介しているインターフェースや手順は、現在と異なっていたり、現在では必要のなくなった回避策である場合があります。過去記事を読む際には、その点に留意ください。個々の記事では掲載日だけでなく、「 なぜ設定するのか」や参考となる一次情報サイトも掲載していますので、それらの情報を元に吟味すると良いでしょう。
Ubuntuとは
Recipeの読者には釈迦に説法かもしれませんが、「 Ubuntu 」とはDebianをベースにしたLinxuディストリビューションのひとつで[1] 、その使いやすさやコミュニティの活発さが評価され、登場からわずか数年で世界でもっとも人気のあるディストリビューションのひとつとなりました。特にDVD一枚やUSBスティックがあればストレージにインストールを行うことなく体験できるLive環境と、さらにそこからマウスをクリックしていくだけでインストールできるお手軽さは、Linuxに初めて触れる人におすすめです[2] 。
[1] Debianは、歴史があり現在も活発に開発が行われているLinuxディストリビューションです。DebianをベースにしたディストリビューションはUbuntu以外にもたくさん存在します。Debian自身もまもなくリリースされるであろう9.0(Stretch)の最終調整中なので、こちらを試してみるのも良いでしょう。
Ubuntuの場合、イメージのインストールやソフトウェアのアップグレードにおいて料金が発生することはありません。すべて無償で提供されています。他のLinuxディストリビューションと同様に、公式のソフトウェアリポジトリから何かをインストールするからといって何か追加の料金が必要になることもありません。もちろん有償のサポートサービスや機能は存在しますので、それを別途使う場合は料金が発生しますが、個人的に使うだけであれば必要になるケースはまず存在しないでしょう。
ちなみにUbuntuが初心者にとって使いやすいとはいっても、Windows文化にそれなりに触れてきた方であれば、UbuntuやLinuxとの文化の違いに戸惑うかもしれません。第120回 「これからUbuntuをはじめるあなたへ」では、そんな違いを説明しています。
何をインストールすべきか
一口にUbuntuと言ってもさまざまなバージョンや派生品(フレーバー)が存在するため、まずはどのイメージをインストールしていいかわからないかもしれません。そこで、現時点でどのバージョンのどのエディションをインストールすべきかという点について説明します。まずバージョンについてはUbuntuに、以下のような慣習が存在します。
半年に1回、4月と10月にリリースされる
2年に1回はLTSと呼ばれる長期サポート版がリリースされる
通常リリースのサポート期間は9ヶ月、LTSのサポート期間は5年である
リリース番号は、西暦下二桁とリリース月で表される
このためこの記事が公開される付近での候補は次の3つになります。
2016年10月にリリースされた最新の16.10
2016年4月にリリースされた長期サポート版である16.04
2017年4月にリリース予定の17.04
通常版のサポート期間が9ヶ月である以上、ほぼ半年に一回メジャーアップグレードが必要になります。会社の端末のような、長期間安定的に動作することが求められるような端末であれば、直近の長期サポート版のインストールが無難でしょう。よって現時点では「Ubuntu 16.04 LTS」をおすすめします[3] 。ただし、Kaby Lakeのようなより新しいハードウェアを使う場合は、17.04のような新しいリリース(カーネル)でないと動作しない可能性があります。
[3] 元の記事である第166回の頃は、LTSのリリース期間に比べてデスクトップ環境の進歩が早かったこと、通常リリースでも18ヶ月と長めのサポート期間だったことから、デスクトップ用途では通常リリースをおすすめしていました。最近はより最新の機能を求めるのでなければ、LTSをおすすめしています。
ちなみに長期サポート版は、おおよそ半年に一回「ポイントリリース」と呼ばれるアップデート適用済みイメージを公開しています。16.04であれば2月にリリース された16.04.2 が最新版です。Ubuntuの公式サイトからダウンロードする際も特別な操作を行わなければ16.04.2が選択されます。
次にUbuntuには、ユーザーインターフェースや用途に合わせて複数の派生品(フレーバー)が存在します。「 Ubuntu」そのもので言うと、インストールイメージとして「デスクトップ用」と「サーバー用」の2種類が存在します。「 デスクトップ用」はデスクトップ環境を用意する際に最適なイメージで、「 サーバー用」はサーバー用途で使うマシンにインストールする際に最適なイメージです。ただしどちらも、最初にインストールされるパッケージが異なるだけで、インストール後にデスクトップ環境やサーバーアプリケーションをインストールすることは可能です。そのマシンの用途がなんであるかを考えた上で選択してください。今回はデスクトップPCにUbuntuをインストールすることを前提に説明を続けていきます。
Linuxには多種多様なデスクトップ環境が存在します。そこでUbuntuには「派生品(フレーバー) 」として、標準でインストールされるデスクトップ環境が異なるイメージも提供しています。代表的なものをあげていきましょう。
Ubuntu: 「 Ubuntu」と言えば基本的にこれ。GNOMEベースのアプリケーション群に加えて、デスクトップシェルとしてUnityを採用している。
Kubuntu: GNOME/Unityの代わりにQtを利用したデスクトップ環境KDEを採用したフレーバー。
Ubuntu GNOME: デスクトップシェルとしてUnityではなくGNOME標準のGNOME Shellを採用したフレーバー。
Xubuntu: GNOME/Unityの代わりにデスクトップ環境としてXfceを採用したフレーバー。
Lubuntu: GNOME/Unityの代わりにデスクトップ環境としてLXDEを採用したフレーバー。
Ubuntu MATE: GNOME/Unityの代わりにデスクトップ環境としてMATEを採用したフレーバー。
Ubuntu以外も長期サポート版を提供していますますが、3年と短めであることに注意が必要です。「 はじめてLinuxを触る」のであれば、情報の多いUbuntuを選んでおくことが無難です。将来的にデスクトップ環境のみを変更できますので、Linuxの操作になれてきてからいろいろ試してみると良いでしょう。他のLinuxディストリビューションを使った経験があるのであれば、そのディストリビューションで採用していたデスクトップ環境に合わせるのもひとつの手です。
ただしデスクトップPCとしてUbuntuを使いたいのであれば、比較的スペックの高いマシンを要求します。ここ数年で発売されたマシンで、メモリが2GB以上載っているのであれば難なく動きますが、「 Linuxだと軽いから古いPCでも動くよね」とWindows XPがプリインストールされていたようなマシンをあてがわれた場合、Ubuntu以外の軽量なフレーバーやディストリビューションを選びましょう。とりあえずXubuntuを動かしてみて、それでもダメそうなら今一度そのマシンの用途とスペックについて相談するのがいいでしょう。
ちなみにUbuntu Japanese Teamでは、Ubuntuをベースに日本語環境向けに調整を加えた派生品として「日本語Remix 」を配布しています。日本語Remixには主に日本語環境で使うためのさまざまな調整が加えられていたものの(第300回 ) 、最近ではそのほとんどが公式イメージに取り込まれています。よってあえて日本語Remixを使う意義は少なくなりつつあります。雑誌の付録としてUbuntuのインストールイメージが付属していたらそれは日本語Remixかもしれません。そのような場合なら、そのイメージを使ってインストールすれば良いでしょう。
何にインストールすべきか
次にUbuntuをインストールするマシンを考えます。Ubuntu公式サイトのダウンロードページ には推奨環境として次の内容が記述されています。
2GHzのデュアルコアプロセッサー
2GBのシステムメモリ
25GBのディスクスペース
インストールメディアを起動するためのDVDドライブもしくはUSBポート
可能であればインターネットアクセス環境
これを満たせない場合は、Ubuntuをインストールできないかインストールできたとしても動作に問題が発生する可能性があります。ちなみにハードウェアとして鬼門になるのが次の2つです。
グラフィックプロセッサーは、Intel HD GraphicsのようなIntel CPUに内蔵されたタイプであれば特に問題なく動く可能性は高いです。NVIDIAやAMDのような、独立したグラフィックボードだったりチップとして組み込まれているタイプの場合、表示はされるものの描画が遅かったり、最悪の場合はUbuntuが起動しないこともあります。インストール後にハードウェアドライバーを追加でインストールすれば改善される場合もありますので第123回 や、NVIDIAであれば第454回 を参考にしてください。
ノートPCの場合、無線LANデバイスが載っていることでしょう。これもIntelのデバイスであれば問題なく動くのですが、他のベンダーのチップの場合は何か対応が必要なケースも存在します。ネットワークにつながらないと調べ物もままならないので、不安であればUSB接続タイプのNICを用意しておきましょう。
すでにインストール済みのWindows環境と共存したい場合は、いくつかの方法があります。
VirtualBoxやVMWare、Hyper-Vなど、Windows上の仮想環境にUbuntuをインストールする方法
Ubuntuのインストーラーからディスクのパーティションを分割してデュアルブートする方法
Bash on Ubuntu on Windowsを使う方法
Windowsをメインに使い、たまにUbuntuを使えれば良いのであれば仮想環境を使う方法がもっとも簡単です。過去にはデュアルブートの方法もよく使われていました。しかしながら現在はシステムディスクがSSDとなったために複数のOSを動かすには手狭になったこと、Windowsのシステム領域のサイズが大きくなったことやバックアップ・高速ブートとの兼ね合い、UEFI対応にともない特殊なパーティション構成が一般的になってきたことなどから、よほどの理由がない限りデュアルブートはおすすめしません。
仮想マシンでUbuntuを使う方法やその注意点は第313回 や第352回 にまとまっています。デュアルブートについては古い記事ではありますが、第97回 や第415回の後半 などが参考になるでしょう。ただいずれの方法を取るにせよ、はじめて使うのであれば専用のPCを1台用意してそこにLinuxをインストールするほうが簡単ですし、何かトラブルがあったときに対応しやすくなります。
最後の「Bash on Ubuntu on Windows」は、Windowsの実験的機能として提供されているUbuntuの環境を導入する手段です。ひとつの案としてここではあげていますが、初心者にはまったくすすめられない代物です。勇気のある方はチャレンジしてみるのもいいかもしれません。
どうやってインストールすべきか
Ubuntuのテストやインストールは、ISOイメージをダウンロードして、それをDVDやUSBスティックなどのメディアに書き出して、そのメディアを使って起動し動作確認、最後にインストールという手順になります。
ISOイメージをダウンロードする方法や、ディスクそのものを入手する方法は、第140回 や第141回 にまとまっています。
ISOイメージをメディアに書き込む方法はJapanese TeamのWikiや公式サイトを参照してください(光学メディアの場合 、USBスティック の場合や日本語の情報 )。
メディアから起動した段階は「Live環境」と呼ばれる試験環境になります。この時点でサウンドやネットワークのハードウェアが動作するかどうかを確認しておきましょう。
インストールの手順についてもJapanese TeamのWikiを参照してください。
特定の機種でどの程度動作するかは実際に試さないとわからないところがあります。例えば本連載においても何度か「インストールしてみた」という記事を掲載していますので、どういう視点で確認しているのか参考にしてください。
第457回 「Celeron J3455で省エネPC生活」( 他にも省エネシリーズがあります)
第432回 「HP EliteBook Folio G1のUbuntu ロードテスト」
第388回 「Intel Compute StickでUbuntuを使う」
第323回 「ECS LIVAでUbuntuを使う」
第298回 「新型MacBook ProでUbuntu 13.10を使う」
第264回 「NUCでUbuntu超小型PC生活」
第252回 「コンバーチブルPCでUbuntuを使う」
インストール後に何をすべきか
うまくインストールできたら、まず行うことは「アップデート」です。Ubuntuのアップデートではセキュリティアップデートと、リリース後の不具合修正の二種類が存在します。これらは常に適用されていることが望ましく、アップデートが必要になったら「アップデートマネージャ」が自動で立ち上がり、利用者に通知を行います。通知に気づいたら、なるべく早く適用するよう心がけてください。インストール直後はこれまでリリース以降に公開されたアップデートをすべて適用する必要がありますので時間がかかるかもしれません。なお、アップデート後に再起動が必要な場合はアップデート完了後に通知されます。
このアップデートは、個々のリリースで設定されたアップデートの期間であればずっと提供されます。サポート期間を終了したものはEOL(End Of Life)と呼ばれるアナウンスがなされ、以降アップデートは行われなくなります(以下の表を参照)。2012年4月にリリースされたUbuntu 12.04 LTSは間もなくEOLを迎えるため、ユーザは14.04以降にアップグレードすることが強く推奨されます。第83回 や第173回 では自動でアップデートを適用する方法や、特殊なアップデートについて説明しています[4] 。
表1 Ubuntuのサポート期間
Ubuntu 12.04 LTS
Precise Pangolin
2012年4月26日
2017年4月
Ubuntu 14.04 LTS
Trusty Tahr
2014年4月17日
2019年4月
Ubuntu 16.04 LTS
Xenial Xerus
2016年4月21日
2021年4月
Ubuntu 16.10
Yakkety Yak
2016年10月13日
2017年7月
Ubuntu 17.04
Zesty Zapus
2017年4月13日(予定)
2018年1月
基本的なアプリケーション
Ubuntuには最初から一通り必要なソフトウェアがインストールされています。どのソフトウェアが標準になっているかは、派生品によって異なる部分があるので、今回はUbuntuに限定して紹介します。
デスクトップシェル「Unity」
Ubuntuは標準のデスクトップシェルとして「Unity」を採用しています。「 デスクトップシェル」とは、ユーザーが何らかのソフトウェアやファイルを検索し、それを起動・表示するためのインターフェースです。大抵の場合はすばやくアクセスするクイックランチャーや、システムの状態を表示するインジケーターなどとセットで実装されます。
UbuntuのUnityは、最近は一般的になってきた検索ベースのインターフェースを採用しています。つまりインストールされたアプリケーションがメニューにずらっと並ぶのではなく、検索用のボックスから文字を入力するかフィルタリングルールをクリックして、絞り込みをかけていくタイプのインターフェースです。
またSuperキー(Windowsキー)と組み合わせたキーボードショートカットも充実しています。Unityの基本的な使い方については第349回 を参照してください。
日本語入力
日本人がおそらくもっともお世話になるアプリケーションは「日本語入力」関連でしょう。Ubuntuの日本語環境はInput Method FrameworkとしてFcitx を、Input Method EditorとしてMozc を採用しています。前者がソフトウェアと日本語入力のためのインターフェースを橋渡しするもので、後者がいわゆる「かな漢字変換」を担当するものだと思えば差し支えありません。フレーバーによってはFcitxの代わりにIBusだったりしますし、他にも好みや性癖にあわせてさまざまな選択肢があります(たとえば第175回 や第200回 ) 。あくまで標準的に使われているのがこの二つということです。
日本語入力に関する情報は第417回 のように、リリースごとに紹介している日本語入力に関する変更点を追いかけておくのが鉄板です(15.10向け 、15.04向け 、14.04向け などなど) 。また第274回 には少し古いですがFcitxの基本情報が、第381回 には日本語入力をはじめとするインプットメソッドの便利機能が紹介されています。
ソフトウェアのインストール
Ubuntuは「リポジトリ」と呼ばれるパッケージ配布サーバーを提供しています。Ubuntuに何かソフトウェアを追加でインストールしたい場合は、このリポジトリを検索し、インストールするのが一般的な方法です。リポジトリを利用する方法には2種類存在します。
Ubuntu Softwareからインストールする(画面左にあるオレンジ色のバッグのアイコン)
端末アプリを開きaptコマンドを使ってインストールする
グラフィカルな操作で完結したい場合は、Ubuntu Softwareを使うことになります。イメージとしてはスマートフォンの「ストアアプリ」と同じだと思ってください。インストールしたいアプリを検索して「インストール」ボタンをクリックするだけです。
Linuxの操作に慣れてきたら、もしくは将来的に使いこなしたいのであればaptコマンドも使ってみましょう。こちらはGNOME端末のような端末アプリを開き、そこからテキストベースで検索・インストールします。こちらについてはデスクトップでもサーバーでも同じ方法が使えることや、動作が高速であるため一度慣れてしまえば非常に使いやすいです。aptコマンドの詳細については、第327回 を参照してください。
リポジトリにあるソフトウェアが古い場合やそもそもリポジトリに期待するソフトウェアが存在しない場合は、別の方法でインストールすることになります。古くからよくあるのはソースコードをダウンロードしてきてコンパイルする方法です。慣れてしまえば簡単ではありますが、それなりにハードルは高い作業になります。Ubuntuの場合は他の選択肢としてPPAを使う方法があります。PPAは個人で立てられるソフトウェアリポジトリで、公式のリポジトリにはまだ入っていない最新バージョンのパッケージなどを提供する目的で利用されています。
ただし公式リポジトリと異なり、品質についてはリポジトリの作成者によってまちまちなのでそれなりの考慮が必要です。PPAの扱い方については第419回 にまとめてあります。また第314回 のようにPPAを扱うためのツールも存在します。
ウェブブラウザーとメーラー
Ubuntu標準のウェブブラウザーはFirefoxです。Ubuntuのパッケージ管理システムが最新のバージョンに追随してくれるので、システムのアップデートを定期的に行っていればFirefoxのインストールやアップグレードについて気にする必要はありません[5] 。第139回 ではFirefoxについて、Ubuntu特有の話題を紹介しています。
もちろん、Google Chromeやそのコミュニティ版であるChromiumを使うこともできます。ChromiumはUbuntuソフトウェアで検索してください、公式のChromeについては第126回 で紹介しています。ちなみに第339回 にもあるようにUbuntu版のChrome/ChromiumでもChrome Castを利用できます。
Adobe Flashは標準ではインストールされていません。必要であれば、ソフトウェア・センターから"flash"で検索してAdobe Flashインストーラーをインストールしてください。Adobe Flashについては第340回 も参考になることでしょう。
Ubuntu標準のメーラーは最近のリリースだとThunderbirdです。過去にはEvolutionを採用していた時期もありました。他にも軽量なSylpheed、さらにはGMailをメインに使う方もけっこうな割合でいるようです。第26回 はメーラーの切り替えについて紹介しています。また第62回 、第63回 、第119回 などではSylpheedの詳しい機能について紹介しています。さらに第247回 ではひと手間かけることでローカルのメールクライアントを使いやすくする方法が紹介されています。
アンチウィルスソフトウェアが必要になった場合は、第30回 や第31回 、第429回 などが参考になるでしょう。またファイヤーウォールを導入したい場合は第76回 、第77回 、第353回 あたりを参照してください。
オフィス系アプリケーション
ウェブブラウザーやメーラーと共に職場でよく使われるのがWordやExcelに代表されるオフィス系アプリケーションだと思います。UbuntuではOpenOffice.orgの後継のひとつであるLibreOffice が最初からインストールされています。LibreOfficeはApache OpenOfficeとは比較にならないほど開発が活発で、年2回の定期的なリリースごとにさまざまな機能の追加や不具合の修正が行われています。Microsoft Officeのファイルフォーマットも扱えるため、特殊なものでなければ閲覧・編集できます。
LibreOfficeについては、本連載でもここでリストアップするのが大変なほど何回も取り上げています。たとえば第448回 の便利な機能の紹介などから、古い記事をたどっていくと良いでしょう。
PDFの閲覧にはEvince(ドキュメントビューアー)が使われます。過去にはAdobe Readerも提供されていましたが、現在ではいろいろと面倒な手間が必要であるため、Adobe Readerは使えないものと思ってください。最近だとウェブブラウザーに内蔵されたPDFビューワーを使うという手もあります。第205回 ではLibreOfficeを使ってPDFを生成する方法や、第88回 ではPDFファイルなどを効果的に表示させるプレゼンツールである「impressive」について紹介しています。
オフィス系ソフトウェアと一緒に使われる可能性が高いのがプリンターです。Ubuntuのプリンター事情はいろいろとベンダーごとに異なるため、簡単には説明できないのですが、PostScriptに対応したプリンターがある職場であれば比較的簡単に使えるかもしれません。第218回 や第271回 などを参考にしてみてください。個人で購入するタイプのプリンターであれば第286回 が参考になります。
バックアップ
バックアップは大事です。大事なことだからもう一度述べますが、バックアップは大事です 。データを保存するストレージやデータベースは壊れるものです。しかも壊れてほしくないタイミングで壊れます。あいつら人の心(もしくはスケジュール)を読みやがるのです。だから常日頃からバックアップを心がけましょう。
バックアップはリストアするまでがバックアップです。大事なことだからもう一度述べますが、バックアップはリストアするまでがバックアップです 。バックアップ手段を確立しただけで安心してはダメです。バックアップをとったものがきちんと期待通りにリストアできるか確認しましょう。そうしないと、リストアする段階で「実はバックアップできていなかった」ことが発覚し、YouTubeでリストアの様子を生放送する羽目になります 。
Ubuntuにはデータのバックアップ手段としてDéjà Dupがインストールされています。Ubuntuのインストール後、しばらくするとバックアップ手段を問い合わせてくるでしょう。第103回 ではこのDéjà Dupの使い方について紹介しています。他にも第399回 ではシンプルで使い勝手のいいTimeShift、第402回 ではより高機能なSystembackなど、さまざまなバックアップツールとそのリストア方法を紹介しています。
端末アプリ
Ubuntu標準の端末(ターミナル)アプリはGNOME端末です。いわゆる「黒い画面に白い文字」の、文字だけで操作するインターフェースを提供するソフトウェアです。
Linuxに慣れないうちはあまり使うこともないかもしれませんが、Linuxの操作に慣れてくると端末アプリのほうが何かと便利だと感じることが増えてきます。たしかにUbuntuの場合はグラフィカルな操作でひととおりのことができます。ただ仕事上の作業を行うとなると、マウスに手をのばすことなくキーボード入力だけで完結し、繰り返しの操作なども機械に任せられる端末アプリ(の上で動くシェル)はとても強力な業務効率化ツールとなるのです。
第18回 や第19回 、第27回 などでは「あえてターミナルを使う」ためのノウハウが掲載されていますし、第36回 や第38回 ではいくつかの端末アプリそのものの紹介を行っています。第291回 や第292回 、第382回 ではその端末アプリをさらに便利に使うための「ターミナルマルチプレクサー」について紹介しています。
最初のうちはとっつきにくいかもしれませんが、少しずつ端末アプリにも慣れていきましょう。きっとあなたの人生を助けてくれるようになるはずです。
ちなみに『Software Design 2017年4月号』 では、「 目的から考える! 実作業から学ぶLinux入門(OS操作編) 」と題して、Linuxの基本的な端末操作の話を掲載しているようです。端末の操作に慣れたい場合は、こちらの記事も参考になるでしょう。
UbuntuのコミュニティとJapanese Team
Ubuntuはコミュニティベースで開発を行っています。Ubuntuについて質問したい、不具合を見つけたので報告したい場合は、コミュニティのページ を参照してください。フォーラム やメーリングリスト では質問や有志による回答が行われています。日本語Wiki では、Ubuntuの使い方やイベントの打ち合わせや開催報告、開発用の作業ページなどを掲載しています。
Ubuntuコミュニティは世界中からたくさんの人が参加するコミュニティですので、円滑に運用するためにいくつかの決まりごとが存在します。その中でも一番重要なのが「行動規範(Code of Conduct) 」です。この行動規範には、他者との良好な関係を築く上で大事なことが言及されています。コミュニティで発言をする前に、必ず一度は目を通すようにしてください[6] 。
[6] CoCの現在のバージョンは2012年に更新された2.0です。Ubuntu Japanese Teamのサイトには1.1の日本語参考訳 が存在します。2.0と1.1の違いは、Ubuntu固有の話や開発者などの表現を極力取り除き、CC-BY-SA 3.0でライセンスしていることと、コミュニティリーダー向けのCoCを統合したことです。これにより、他のコミュニティでもUbuntuのCoCをそのまま、もしくは必要に応じて改変して利用できるようにしています。
ちなみに、本連載も担当しているUbuntu Japanese Team は、各地域に存在し、各言語でのコミュニティサポートや翻訳・開発・普及活動を担う「Local Community Team 」です。開発や不具合修正などはもちろんのこと、オープンソースカンファレンス のようなイベントに出展したり、第452回 のように定期的なオフラインミーティングなども開催しています。
RecipeとTopics
gihyo.jpでは、Ubuntuに関して以下の2種類の連載を行っています。
大雑把な違いは、RecipeがHowTo系の話題で、TopicsがUbuntuコミュニティで起こった出来事です。また、上記連載の姉妹版として、Software Design にて「Ubuntu Monthly Report」という記事も掲載させていただいております。今後、Ubuntuと付き合う覚悟(!)ができた方は、ぜひこれらの連載も読んでいただけたらうれしいです。